2013年10月14日月曜日

ひきこもり企業、ケイレツの崩壊

「ケイレツ(企業系列)」は改革やリスクを避けるために編み出した日本独自の社会システムである。アメリカなどからは「なぜ高性能で安価な部品があるのになぜ買ってくれないんだ」、「日本はフェアじゃない」と批難されてきた。そんな日本でも最近はグローバル化が進み、ケイレツという城塞は崩壊しつつある。ケイレツでは世界を相手に勝っていくことができないからだ。

改革が行われない

ケイレツとは、商品企画→設計・開発→製造→販売・営業、サポート の縦の結びつきが強い企業の集合体。資本関係(株による支配)、あるいはケイレツの外から部品を買っちゃダメ、仕事の依頼は必ずケイレツ内で行うというような約束をさせる企業関係さす。

固定化された縦のラインに引きこもることにより、同じ工程を行う企業との競争を避け(特に外資系企業の参入を阻む)、営業力の程度にかかわらず一定量の仕事を確保することができる。 日本人は本音で話し合うことが苦手なのでこっちの方が安いからといって急に取引先を変えると感情的になりやすい。取引先をできるだけ変えない方が安心できた。

日本製は信頼性、品質に優れているといわれていたが現在ではアジアでも日本製と同等の物が作れるようになった。ゆえに日本国内の工場を閉鎖しアジアで全面的に製造する企業は増加している。

簡単にはまねのできない高度な仕事、あるいは競争しなくても良いサービス業に移行する必要があるのに、世界に目を向けないで、「ケイレツにしがみついていれば仕事がある、何とかなる」と思っている経営者があまりに多い。それは大手企業(ホールディングス)が秘密の会議で検討している内容を中小企業は知らないから。ケイレツ全体が今、瀕死の状態であり利益の上がらない業務(たとえば製造)を切り離したがっている。

「価格が高くてもケイレツから買わなければならない、それが助け合いだ!」とは言っていたがそれにも限界がある。Xデーはある日突然やってくる。明日言い渡されるかもしれない。 とにかく改革が必要なのに危機感がない(というか改革にはリスクが伴う、これが嫌なのでケイレツの中に引きこもっているのもしれない)。

それなりの仕事量はもらえているのでケイレツがどのぐらい病んでいるか気が付かない。改革が行われない環境では残業時間を増やせばなんとかなるという思想になってしまう。それは派遣切り、過剰残業の原因の1つとなっている。

現場のことを理解しない指揮・命令

ケイレツでは多くの企業の集合体となるのでTOPから実務を行う企業までのパスが長く、現場のことがわからない人が命令を出すことになってしまう。書類上は請負契約となっていても大手企業が中小企業が採用する人材(人事)の決定権を持っていたり、他の企業の人材に対して直接指揮命令をしたりする。ずいぶん無礼な振る舞いであるが、仕事の依頼主がある特定の企業に依存してしまっていると、この無礼な振る舞いも容認せざるをえなくなる。

ビジネス責任を大手企業が負うのならばまだしも、失敗を隠し中小企業側の担当者の能力不足のせいにしてしまうこともある。無理難題、わがままを言うだけで責任をとらない、プロジェクト全体の成功を考えない。大手企業が「ビジネス・パートナー」ではなく、「お客様」になっている。

特に設計/開発の仕事では多くの知識が必要になるのだが、大手企業の人間は毎日丸なげをしているので10年経っても一人前になれない。技術的なことに対して正しい判断ができない、現場の状態を把握しないで命令を出してしまう。

間違った命令を出してその責任をとらない。そうすると現場のやる気(モチベーション)が下がるばかりでなく、プロジェクトを失敗させる原因にもなる。ケイレツ全体では資本力が大きいので少しばかりの失敗で転覆することはなくなるかもしれない。しかし「臭いものには蓋」ということを続けていると徐々にケイレツ全体の資本力は弱まりいつかは死にいたる。そしてケイレツの健康状態を把握しているのは上層部のごく一部の人間だけだ。

命令を出す人間と実行する人間が同じ部署にいないと相手のことを考えられないということもある。大手企業の人間が電話・メールで無理難題を押し付けて先に帰ってしまうということも同じ場所で仕事をしていないからだ。

同じ場所で仕事をしていれば部下が遅くまで残業しているのに上司が先には帰りづらいであろう。なぜならどの程度苦しんでいるか目の前で見れるし、あまり無茶な要求をすれば部下から反感をかいその場所にいづらくなるから。

従来は、社内で受託開発を行っていた企業は営業力が弱く、ケイレツに組み込まれたに等しい状態になっている。そのような派遣会社では、経営者がその意思で方針決定をできなくなっている。そう「コンビニの店長」と同じだ。

「丸なげ」が起こりやすく、仕事の発注元から実務を行う企業までパスが長くなると、間に入る企業数が多くなるので実務を行う企業が搾取されることになる。調べて間に入っている企業数におどろいた。

利益を生まない「伝言ゲーム」は無駄な工数を消費し、情報を伝達するのに時間がかかる。実務を行う企業にとって企業同士のフェーズ合わせに時間がとられ、短い時間で作業を行わなければならず、現場に負担がかける。IT関連の仕事では仕様変更がたびたびあるので伝言ゲームのパスが長いとそれだけ不利になる。

中小企業(実務を行う企業)の苦悩の原因となっている。

日本はどこへ行けばよいか?

経済優先の世の中ではどうしても「グローバル化」が必要になる。 ケイレツの中に引きこもっていないで積極的に世界に出て行く必要がある。それには独自の技術を持ち、大手企業を対等に交渉できるようになること。つまり「ベンチャー企業」をめざす。製造は今後不利になるので日本を設計/開発の拠点とするのが良いだろう。

あるいは、設計/製造をやめてしまって、営業/サポート/翻訳のみに集中するという方法もある。TPPが実行されれば中国などから安い商品が多量に流入するであろう。ケイレツには属さないで独自にアジアから良いものを探してそれを積極的に輸入販売するのはどうだろうか? その際に言葉の壁があるので日本人がマニュアル(ソウフトウェアのヘルプファイル)の翻訳を行い、営業/サポートする必要がある。

人の幸せはそれぞれで自分の価値観を周りの人間に矯正してはならない。お金さえ沢山あればしあわせと感じる人もあれば、個人や家庭の時間を大切にする人もいる。どちらが正しいと言うのではなく、人それぞれに生き方、考え方があると言うことだ。そしてお金がほしい人、時間がほしい人それぞれ労働者が選択できることが重要だ。日本人は周りと同じにしなければならないという気持ちが強く、国内の企業における働き方や賃金が同じになってしまっている。これからは海外に目を向けた「グローバル化」が必要であるし、どこの企業でもやっていない働き方を試してみるのも良い。

国内で安い労働力を探すのではなく、積極的に海外に アウトソーシングをするとか、積極的に最先端の技術に挑戦し、優秀な人材を高い給料でスカウトするということも積極的に行うべきであろう。後ろ向きなビジネスではなく積極的に打って出るビジネスが必要だ。そのためには「働き方に多様性を」、「多様性のある企業」が求められる。7Hの短時間労働、残業なしの労働を労働者個人個人で選択できることを法律で義務化するのはどうだろうか? 結果が出せた人に1ヶ月のバカンス(または追加の有給休暇)を与えるというのも面白い。

アメリカでは、結果が出せればそれに見合った給料や1ヶ月のバカンスがある。日本で、スキルアップを行うと余計たくさんの仕事がふってきて過剰残業を要求される。給料は、年功序列で決まっている。派遣では職種/性別により企業が決定する。まことに夢のない世界、まじめにスキルアップした人間が損をする世界だ。これではやる気は起こらない。

ビジネスで必要なのは、家庭や個人が犠牲になることではない。自己犠牲がりっぱだという考えがあるので犠牲になることが目的になってはいないだろうか? 目的を履き違えてはいけない。目的・成果とは何かもう一度考えてみよう。

2013年10月10日木曜日

復興特別法人税のゆくえ

最近は、 復興特別法人税撤廃、法人税の引き下げ、消費税の増税(8%)がなど話題になっているようだ。個人や家庭に対する負担を増やして企業に甘い政策になっているのはなぜだろうか?

法人税改革

法人税の減税を行うのであれば、その際に雇用対策や ブラック企業対策もかねるのはどうだろうか? 労働者が経営者に意見できない状況であるので行政が民間企業を評価するようにするのが良いだろう。ブラック企業は自分だけ儲けようとしているわけだから、その弱者から搾取した分を税金として徴収し、それを社会を良くするために使う。

たとえば行政が企業の評価を行い以下のように採点を行い、その結果に基づき法人税率を変える。

具体な評価基準 【提案】

100人以上の事業所について下記の項目を民間企業に報告、自社のwebで公開させる。 100人未満の事業所は原則として評価はしないで「評価C」とする。ただし労働者からのクレームの多い、または過去3年以内で労働基準法違反があった企業は人数に関わりなく評価を行う。何がブラック企業か? 定義が難しいので1年に1度評価項目やポイントのつけ方は再考する必要がある。

  • 労働基準法に違反していないこと。
  • 各職種ごとに男女の構成比率を統計し、極端に偏っていないこと (ただし合理的な理由がある場合は除外して良い)
  • 各部署ごとに50才以上/50才未満の構成比率を統計し、極端に偏っていないこと (ただし合理的な理由がある場合は除外して良い)
  • 雇用の際に年齢や性別で差別が行われていないこと。 (50才以上を積極的に雇用する措置は良い)
  • 1ヶ月あたりの平均残業時間が20H未満であること。
  • 7Hの短時間労働の枠を従業員の人数の5%以上設けていること。
  • 請負/派遣の人間に対して派遣先の管理職が残業を矯正していないこと。 (残業の命令を出すことのできるのは派遣元だけ)
  • 雇用契約時に書類で条件を明示し、本人の同意を得ていること。 (労働基準法では口頭だけで良い項目もあるが、全て書類で明記するのが望ましい)
  • 不当な解雇をしていないこと。 (雇用時に短期派遣(雇用期間を明記)であることを労働者に説明をして、納得をして契約しているのであれば問題ない。長期派遣と言いながら契約の途中で解雇したり、正社員(特定派遣)だと言いながら仕事がなくなったから解雇するとか、新卒を壊れるまで酷使し使いすてするとかはブラックである。※転職率だけで善悪を判断しないこと)
  • パワハラが行われていないこと(1) 暴力、人間性を否定する暴言や罵声、人間関係からの切り離し(無視、仲間はずれ)をしていないこと。
  • パワハラが行われていないこと(2) 過大な要求(絶対に不可能な日程表をおしつけるなど)、過小な要求(仕事をあたえない、その人の能力にそぐわない単純作業をやらせる)、個の侵略をしていないこと。

民間企業は掛け声だけでは動かない。評価A(優良企業)~E(ブラック企業)の5段階評価とし、この評価結果に基づき法人税率を変化させる。お金の損得に関係することには敏感であるからブラック企業対策にはこれが有効。企業の査定結果をインターネット上で公開するようにすれば、あまりあこぎな商売はしなくなるかもしれない。評価内容を吟味すれば、雇用に関する年齢や性別による差別、失業率の改善などみこまれるであろう。

社会に貢献している企業とブラック企業を同じ扱いにしてはならない。

最近の労働法改正は何かおかしい。 法律の改正の際に弱い立場の人(たとえば派遣やパート)から意見を聞いたのだろうか? お金持ちに都合の良い社会になっていくのはなぜだろうか? ほんとうに「袖の下」はもらっていないのだろうか?

日本は「事なかれ主義」で不平が出そうなことはやらないということもある。だから解決できるはずの問題点がいつまでも手付かずのまま改善されていない。行政がはっきりした態度で「ブラック企業の取り締まり」を行うべきだ。

⇒なくそう、職場のパワーハラスメント

⇒日本共産党・ブラック企業規制法案の提案

若いうちは働け!ワーク・ライフ・バランスなんていらない?

「若いうちはたくさん残業しろ」といっている人の中には、世の中お金が全てであり、労働時間を増やせば利益が上がると信じている人と、単に自分の若い頃と比較してひがんでいるだけの人がいるようだ。若いうちは先輩の分まで仕事をして、重役になったならばサボっても良いという因習がある。この因習を信じていた人は若い頃自分は沢山残業してがんばったのだから今度は楽をできると思っていたのにという感情的な反発だ。

まず前者(残業すればもうかる)だが、最近はアジア新興国との価格競争が激しく同じ仕事をしていると労働時間を増やしてもワーキング・プアになるばかりだ。社会人で時給800~900円の仕事をしている人がかなりいる。 ここで統計を見てみよう。日本人(東京)の平均年収は362万円ぐらい、中国人(北京)の平均年収は63万円ぐらい。5.7倍の給料差がある。 日本製は信頼性、品質に優れているといわれていたが現在ではアジアでも日本製と同等の物が作れるようになった。 世界と競争しているとは実感はなくても多量の安い商品が輸入されているわけだから、まともに競争すれば1/2とか1/5の価格で売らなければならない。労働者の時給もそれなりに下げなければならなくなる。

⇒月給サーチ(世界の給料、労働時間統計)

簡単にはまねのできない高度な仕事、あるいは競争しなくても良いサービス業に移行する必要がある。残業時間を増やすことは、少し問題を先送りすることはできても根本的な解決にはならない。世界に目を向けないで、ケイレツにしがみついていれば仕事がある、何とかなると思っている経営者はあまりに多い。改革が必要なのだ。

設計/開発を行う人間は新しい技術を進んで学習する必要がある。 毎日、遅くまで残業、社内では目先のことしかできない状況では、新しい技術の習得はできない。目先のことに追われて、スキルアップを怠っていると次の製品で他社に負けてしまう原因となる。基礎的な勉強をするために企業が残業代を支給するのは難しい。それに会社にいると雑用に追われて机上での学習は困難。だから残業を削減して自宅で学習する必要がある。そして結果がだせたならばその成果に対して会社は対価を払うようにする。 たくさん残業した人がえらいとか、タイムカードで人間を評価するというのはダメな管理法だ。

そもそもプロの仕事で重要なのはやりかたではなく結果だ。 ここまで仕事が終わらなければ帰っちゃだめというのは「まさに小学生の管理方法だ」。 (そもそも派遣の場合で残業の命令を出せるのは派遣元で派遣先にはその権利がない。労働法を知らない管理職があまりに多い!工数計算のできない管理職が実現不可能な日程表をゴリオシするとかレベルが低すぎるw) 本人の意思で残業しているならともかく、管理職の都合で残業時間を増やしても効率はあがらない。大企業病といってみんなやる気がないが上司より先に帰ると査定に響くからとか、同僚からひがまれるからという理由で会社の中でブラブラしているだけという光景を見かける。会社にいるから仕事をしていて、自宅にいるから仕事をしていないというのは設計/開発の仕事にはあてはまらない。

次に後者(ひがんでるだけ)だが、 現場の人間は、労働を提供して給料をもらう立場。経営者は労働の提供を受けて給料を支払う立場。隣の人と比較しても仕方のないこと。経営者は、仕事のしやすい環境を提供する義務がある。給料が少ないとか、残業が多すぎるとか、労働する環境が悪いのであればひがむのではなく経営者と折衝すべき。日本では労働組合がない、またはあっても力が弱いのでなかなか経営者に意見できない。結局、隣の人と比較してグチをいってるだけになってしまうことが多いようだ。

高度成長の頃は、なかよく仕事をしていたし、働くほど給料もよくなり生活は向上した。 そして終身雇用で社内で仕事をすることができた。今は、搾取するだけの経営者、いくら働いても給料はよくならない。エンジニアの仕事は特定派遣が多くなってしまった。そして正社員/派遣の差別待遇、いじめ。雇用は保証されない。年金も支払われるどうか疑問。同じ労働時間であっても「いやな疲れ方をする時代」になってしまった。

今の若者の方が良いとは必ずしもいえない。隣の芝生は青く見えるものだ。ひがむだけでは何も解決はしない。幸福は自分でつかみとるもの。自分から行動を起こし、選択してゆくことだ。今まで過剰残業が当たり前だったのは、終身雇用だから経営者に意見すると、会社にいずらくなる。だから不満があっても黙っていた人が多い。

プロの仕事は結果が全てで手段は合法的かつ周りの人に迷惑をかけなければどうでも良い。 実際に、出社時間自由、お昼ねも自由の企業がある。仕事の結果を評価し、労働者が目標をしっかり持っていればそれでも事業は成り立つ。大抵の会社は、年功序列で給料を決めているのでそうするとただだらける人が多くなってしまうので採用できないだけ。 なにも他の会社と同じにする必要はないのだから経営者と労働者で話し合いを行い多様な会社が存在して良いはず。

人生は1度きり、あなたには選択する自由がある。転職をしても良いし、自分たちで新しい会社を作っても良い、自営業になっても良い。あるいは労働組合をつくり折衝する。リスクを恐れて何もしなかったのではないだろうか? 家畜(社畜?)になっているのは実行しないからだ。

ブラック社長は、この不況で転職はできないだろうとたかをくくり、仕事をする環境の改善はせずに最後の1滴までしぼりとろうとする。ブラック企業に居続けることは、ブラック社長にエサを与えていることに等しい。なぜならばブラック社長とそのとりまきだけで事業はなりたたないのだから。

幸福になりたいと思ったならば実行しよう。

⇒ブラック企業対策に国が本気?

ブラック企業の判定基準やどのようなペナルティがあるのか国民に開示する必要があるであろう。取締りの途中経過なども逐次公開していく。 法律を遵守している会社(コンプライアス)なら何も怖くはないはず。経営者をしていながら労働法がわからないという言い訳は通らない。分からないならば社内で詳しい人間に聞く、あるいはコンサルタント業者に依頼する方法もある。