日本の会社はとにかく残業が多い。
最近は仕事が減っているわけではないのに派遣ぎりをして一部の人間に非人間的な労働を強いている会社もある。ワークシェアリングが必要の声があるが、一向に普及はせず、部署間での残業時間の格差もなくならない。残業に頼らないで業務を行う方法を考えてみよう。
残業の弊害
実務においては必ずしも高度な知識は必要なく、体力勝負ということがある。
しかし過剰な残業は、プライベートの時間、家族の時間を奪い、ストレスを与える。ストレスは人間の健康に悪い影響があるが、それは徐々に人を蝕むためになかなか因果関係を証明するのが難しい。
また人間の体力には個人差がある。だからどのぐらいの残業に耐えられるかは個人差がある。子供の頃、野山を駆け巡っていた世代と 最近の若者では体力が異なる。平均を1とすると0.5から2ぐらいのばらつきはあるだずだ。子供は周囲の環境に適応する能力があり、体力もその頃の生活習慣できまる。今の子供は、塾に通うか、家の中でコンピュータ・ゲームのどちらかで、体を動かす遊びをしない。上司から見て「最近の若者は...私が若かった頃は..」と言ってしまうが、実は上司の世代がテストの点数にこだわったり、外での遊びを教えなかったことが体力低下の原因となっている。
上司からみて怠け者のように見えても、それは体力がないためだ。このぐらい大丈夫だと思い無理を強要していると出社拒否になってしまったり、退職してしまうということが起こっている。これは「がまんが足りないのではなく、体力がないのだ!」
体力に個人差がある以上、管理職の都合で残業を強制するのではなく、本人と相談をするべき。お金がたくさんほしい人、プライベートの時間がほしい人それぞれ個人の都合があるので全てを同じにしようとしないことが肝要だ。会社に多様性がないから社会に適合できないで、ダンボールで暮らす人、違法な仕事をする人が発生してしまうのではないだろうか?
会社が個人や家庭のための時間まで搾取するということは次の世代に悪影響がある。子供どうしのコミュニティーが崩壊したのは塾の影響であるし、父親が子供と遊びたくても遊べないのは過剰な残業の影響がある。
たくさん残業させた方が儲かる、子育ては母親に押し付けておけば良いという考えには問題がある。母親だけに押し付けてしまうと子供をかわいがるだけになってしまったり、心配だからと言って家のなかに閉じ込めておくだけの対応になってしまう。母親、父親ともにストレスが増大し、家庭の雰囲気は悪くなる。実際に離婚率も増大している。子供が一人前になるのは単に甘やかすだけではなく、実社会で労働をしている父親の目が必要であるし、体力の向上という意味でもいっしょに外で遊ぶ経験が必要。アウトドアの経験をさせてあげるには父親の参加が必要ではないだろうか?
そして気持ちの余裕がないと創造的な仕事ができない。どうしても機械的な仕事になってしまうということも忘れてはならない。
沢山残業させた方が儲かる?
過剰な残業が発生しているのは沢山残業させた方が儲かるという思想があるからであろう。特に最近は、派遣切りをして特定の人間に過剰な残業をさせる会社がある。
ワークシェアリングをすると人数が多くなり、管理職の仕事が多くなる。また人数を多くすると事務所の面積、机と椅子の数、道具の数などが必要になりその分費用がかかる。
管理職の仕事が多くなるのは細かい部分まで上司が規定しなければ心配、つまり護送船団方式の考えであり、現場での判断を拡大し個人が自主的に仕事をすれば良い。事務所の面積、机と椅子の数、道具の数などは2交代制、あるいは3交代制にすればそれらを共用できる。
正社員の雇用条件を変えるのは難しいので派遣と組み合わせるのが良い。派遣を遅番にして、労働時間を短くする。労働時間を短くしたい人は正社員をやめて派遣として再契約する(経営者の都合でなく、本人の意思を優先すること)。生活の保障を重視するのか、自分の時間を大事にするのかはその人の生き方であるはず。派遣よりも正社員の方がえらいとか、給料が良いというのはおかしい。給料はその人の成果できまるべき。
柔軟な考えでもって改革を行えば対応は可能であるはず。やりかたをかえると苦情がでるので改革をやりたくないというのが現状であろう。
こんな法律改正はどうだろうか?
現在は、残業させたなら1.25倍の給料を支払うことが労働法で決まっている。これを2倍の給料を支払うことにする。そうすればお金儲け優先の民間企業はワークシェアリングをせざるをえなくなるのではないだろうか? 失業率が増加しているのは、派遣切りの影響であるので、短期的な経済対策としても有効だ。2~3年だけの限定的な法律改正であってもワークシェアリングの改革がおわればその効果が持続するはずだ。
もちろん残業代を払わないとか、36協定のリミットを超えて働かせている、あるいは36協定を作らないで1日8H以上労働させているのは違法なので、そのような場合は、労働組合、あるいは労働基準監督局に通報すること。犯罪者を知っていてかくまっておくのはその人にも罪がある。泣き寝入りは絶対しないことだ。
労働基準法は単なる建前になってしまっている。
労働基準法を守らないのは、実際に罰金の徴収が行われていないことが原因の1つであるので、違反者に罰金を払わせてそのお金で労働基準監督局の人数を増やし、積極的に取締りを行う。それは増税を必要としない雇用対策としても有効だ。自分は悪いことをしていないと思っている人間を改心させるのは難しいので、ネズミ捕りのように1件1件に時間をかけないで罰金を徴収するのが良い。
現実的な日程表を作れない
何か仕事をする際の日程は政治的に決まってしまうことが多い。
特に設計/開発においては工数計算をするのが難しいということ、あるいは希望的観測によって日程が左右されてしまうということもあるだろう。
たとえば受託開発において仕事を受注できるかは、見積もりの金額と納期で決まってしまう。本来、ビジネスはWIN-WINでなければならないが、商業主義の世界ではお金を払う側(顧客、または経営者)の都合で一方的に決まってしまう。
そして「納期を重視すると言いながら無理な日程表を押し付けるばかりで協力をしない」あるいは「希望と実現可能な日程の摺り合わせができないままプロジェクトがスタートする」ということが日常茶飯事となっている。
これは人を不幸にし、仕事を楽しめないものとしている「パワハラ」といって良い。
金額と納期で決まってしまうのは自分だけ儲けようとする気持ちがあるから。これは顧客の性格でどうしようもないこともあるが、顧客との間に信頼関係を築くことが有効ではないだろうか? この会社と長くつきあって行きたいと思ってもらえれば、ゴリオシではなく、話し合いが可能であるはず。
あと営業的な戦略であるが、開発途中での変更の際に「金額と納期は後で相談させてください」と言ってあいまいにしておく方法がある。初めは相手の希望の金額と納期にしておいて、後からずるずると引きのばす方法だ。 ここらへんは営業の手腕(二枚舌?)しだいだと思う。
がんばっても絶対的に工数が不足する際は上司/プロジェクトリーダーに相談する。日程表の見直し。社内の他部署に手伝いを頼む。あるいは金額的に予備を確保しておき、後半で短期派遣に手伝ってもらうとか。
どうせ言っても対応してもらえないだろうと思って黙っていて、誰かが倒れた時には管理職の責任になる。プロジェクトが失敗してしまうことは、会社にとっては大きな損失であるので、言いずらいから黙っているというのは好ましくない。
日程表が先にできてしまい、社内にいる人間の能力、リソース(プロジェクト人数、設備、開発費)が把握できないままプロジェクトがスタートすることもある。初めに確保できる工数に関係なく、政治的に日程が決まってしまう???
同じ会社なら助け合うのは当然のはずだが、部署の垣根を越えて工数の調整が行われることは少ないようだ。日程が政治的に決まってしまうのは上の人間の責任であるので協力してしかるべきではないだろうか?
工数の計算は難しい
残業が多くなる原因の1つに工数の計算ができないということがある。
作業者の能力や繰り返し作業することでのなれ、疲労という変動要因はあるが、製造では同じ作業を繰り返し行う傾向にあるので前回の工数から今回の予測を立てることができる。しかし、設計/開発ではまだ世の中にないものを作り出してゆくので、工数の予測が難しい。
また仕事の完成度が明確でないので必要な工数もはっきりきまらない。結局、どんぶり勘定、特定の人間の勘になってしまうということもある。
日程を考える際にマージンを持たない、残業をすることを前提として日程を作ってしまうことが良くある。しかし注意して作業しても失敗して、やりなおしが必要になることがあるであろう。また割り込みは上の人間の都合で発生し、現場の人間ではどうにもコントロールできない。そして開発/設計では途中での仕様変更がどうしても起こる。これらは日程の遅延をもたらす。作業者の個人差(能力のばらつき)などもある。よって必ず日程にマージンは必要だ。マージンを持たないと日程表は「画に描いた餅」になってしまう。
残業時間は、マージンなので日程表を作成する際には必ず残業なしを想定して作り、希望的観測で工数の予測が左右されないよう論理的に考える。どの程度のマージンが必要かは類似したプロジェクトの予定/結果と比較するのが良い。
仕様を早急に決定し、完成度(評価項目)を明確にしておくことも重要だ。
仕事の優先順位が決められないので、割り込みを追加しても日程の遅延は認めない、追加の人員を認めない。とにかく「できること」と「やりたいこと」の分別がついていない。これは「パワハラ」であることを上の人間に自覚させる。
工数を節約する
予定どうりに仕事をすすめるには、工数の節約も必要だ。 工数というのはあればあるだけ使ってしまうので節約するという意識が必要だ。
それには人件費が見えるように数字化する。プロジェクトで消費している人件費(金額)を1週間毎に統計し、それが上の人間に見えるようにする。そしてプロジェクトに必要な人数で制限を掛けるのではなく、人件費(金額)で制限を掛ける。
上の人間が、作業工数を考えないで仕事の丸投げをする件については、割り込みで発生したコストが見えるように数字化する。誰がどのぐらいの金額で無駄使いしたか、どのぐらいプロジェクトの遅延に影響したか可視化する。 残っている工数がどのぐらいか、仕事の優先順位をどうするかを考えてもらう。
助け合いをする
特定の個人、特定の部署のみに残業が多いのは不公平であるので残業時間が平均化するように調整が必要であろう。設計部内で忙しい人と暇な人がいるのであれば、忙しい人の仕事を積極的に手伝うようなしくみを考えれば良い。ただ現実的には、プロジェクト後半になるとみんな忙しいのでプロジェクト内での助け合いは限定的なものとなる。
部署の垣根を越えた助け合い、社内人材流動化が必要であろう。たとえば開発後半では製造部の人間を設計部内で製品評価の仕事を手伝わせる。評価の仕事だけならばほとんど教育なしで手伝わせることができる。開発後半にもなるとメインの開発メンバーは疲弊しているので定時で帰れるようにする。そうすることにより設計部と製造部との残業時間の格差を低減することができる。
また量産開始時には、製造技術の人間だけでうまく製造ラインの構築できないことがある。なぜならば知識の豊富な人間は設計部にとられてしまうことがあるし、製品の技術的なことを良く知っているのはその設計者であるから。設計部の人間が製造ラインの構築を手伝う。そうすることで製造部の不満を低減できるし、次回の開発で製造部の人間に手伝ってもらいやすくなる。
もちろん、開発の後半で短期派遣に入ってもらう方法もある。しかしそれは教育にコストがかかるとか、目に見える金額が発生するので、えらい人の承認を得るのが難しい。
意思決定ができない
残業が多くなる原因の1つに、いつまでも仕様決定ができないので、設計のスタートが遅れるというのがある。無駄な会議が多く、いつまでも結論がでないのはなぜだろうか?
日本では後で責任を取りたくないから全員の合意を会議で取ろうとする傾向にある。だからプロジェクトメンバー以外も呼んでしまい人数が多くなり結論を出すのに時間がかかる。
誰が何を判断するのか? このプロジェクトメンバーは誰と誰か? 当該のプロジェクトで判断することができるのはそのプロジェクトメンバーのみであり、プロジェクトが失敗した際に責任をとるのはそのプロジェクトメンバーであるということを明確にすべきであろう。(技術的なことの最終判断はプロジェクトリーダーが行う)
役割分担があいまいで会議のたびに出席者が変わるといつまで経っても結論が収束せずに発散したままとなる。これがプロジェクト全体として意思決定ができない、フェーズ合わせができない原因。 また日本人は本音で話すのが苦手、感情に流されやすく論理的に話すことができないというのもある。 「役割分担を明確にする」「会議のやり方を工夫する」「本音で論理的に話す」ということが必要であろう。
がんばらなくてすむためには、がんばる
残業時間削減のためには、交渉が必要。 ただし結果が何も出せていないのに残業削減をしてほしいといっても却下されてしまう。場合によっては切られてしまうかもしれない。だからその前に結果を出して会社から必要とされる人間となる必要がある。結果が出せたならば勇気をもって交渉する。 ビジネスでは結果を出すことが重要で、残業するかどうかはどちらでも良い。「プロの仕事は結果が重要」ということをはっきりと言い、それを体言する会社組織にすべきだ。「たくさん残業させることが目的」となってしまっているならば、転職をしたほうが良い。
それから残業禁止にすると言って、自宅への持ち帰り残業を強要するのは禁物だ。 残業禁止にして持ち帰り残業を強要するのは在宅勤務であるので、もしそうするのであれば自宅で仕事をした分も給料が支払われるべきであろう。
もし成果主義を導入するのであれば、絶対に残業を強要してはならない。そしてタイムカードや勤務表も廃止すべきであろう。成果主義というのは時間で管理するのではなく、仕事の結果で評価する(金額を決める)ということだからだ。