最近、「コニュニケーション能力」という言葉を多く聞くが、あいまいで人により解釈がことなるようだ。ここでは就職の場面で使われるコミュニケーション能力、人と人とのコミュニケーション能力について考察する。
コニュニケーション能力とは
コミュニケーション能力とは人から人に正確に情報を伝え、あるいは情報を受け取る、折衝する能力。
コミュニケーションには本来 論理的コミュニケーションと、感情的コミュニケーションがある。ただし就職の場面で使われる「コミュニケーション」とは感情面のみが強調されるきらいがある。
なぜコニュニケーション能力がクローズアップされるか
コミュニケーション能力という言葉が氾濫するきっかけには派遣の普及、個人主義の影響がある。
従来の日本の会社は終身雇用であり、お互いに仕事のやり方がわかっていたため、「阿吽の呼吸」で実行し、細かいことは話さなくてもすんだ。
「空気を読め」という言葉があるように個人的な意見を言うのはタブーとされ、建前だけで仕事が進んでいくのが日常であった。
ところが派遣が一般的になると、会社によって仕事の仕方が違うため、前の会社でのやり方にこだわってしまう人も出てくる。
そのやり方が効率的であったとしても変革するのに強い抵抗を持つ人がある。
現在の会社の慣例に従うのか、新しいやり方に変えるか?
いやおうなくコミュニケーション(折衝・妥協)をとる必要がある。
アメリカでは、さまざまな人種、さなざまな宗教、さまざまな考え方があり、自由/多様性を認めるお国柄であるため、日ごろから積極的に話す(折衝する)ことは求められていて、その訓練がされている。
それに対し本音で話す訓練を受けていない日本人はこの場面でトラブルになりやすい。なぜならば感情に流されやすく、冷静に、論理的に話すことができないからだ。会社としてはごたごたは困るので従順な人が良いという意味で「コミュニケーション能力のある人が良い」という言い方をしてしまうことがある。
経済的に窮地にある日本の会社は改革が必要であるので、冷静に、論理的に話し積極的に改革してゆくことが必要だ。いつまでも「ことなかれ主義」に流されていてはいけないのではないだろうか?
コミュニケーションの手段
コミュニケーションとは口頭だけではない。まず手段を列挙しておく。
- 口頭(言語による、直接しゃべる)
- 非言語(表情、身振り、手振り)
- 書類、手紙
- 電話
- メール
- PCを介した手段(ファイルの共有、ブログ、webなど)
これらの手段はどれが優れていてどれが劣っているというものではなく、一長一短があるのでTPOで使い分ける。特に最近はPC(コンピュータ)の発達に伴い、PCを介してのコミュニケーションが大事になってきている。
たとえばメールは簡単に転送することができ情報の共有に便利である。
しかしあまり重要でない内容まで転送していると、読みきれないので本当に重要なメールを読んでもらえないことがある。
メールでは内容の重要性が伝わらないので重要なことは口頭を併用した方が良い。ただ全ての内容を口頭でというわけではない。細かい仕事の指示などは口頭だと正確に伝わらなかったり、全てを覚えきらなかったりするためだ。メールは記録が残るのでミスが少なくなるが、口頭より多少時間がかかる。多くの情報を伝達するのに適する。
また相手によって使い分ける必要があるかもしれない。
普段、本をよく読む人は読解力があるので文章に抵抗がない。反面、あまりおしゃべりはしないので口頭で説明するのは苦手かもしれない。
おしゃべりの好きな人は、口頭での説明を多用する。反面、本を読まないので文章を読むのが苦痛かもしれない。
また普段 口頭を使う人は感情を主体に考えているので、表情、身振り、手振りなどが見えないメールでのコミュニケーションでは不安を感じるかもしれない。
若い人たちはPCの扱いになれており頻繁に使うが、年配の方はPCの扱いが苦手で苦痛に思っているかもしれない。
人は自分の得意な手段を使いたがるが、相手に合わせて手段を選択することも必要だ。
意思決定の仕方
コミュニケーション能力のある人とは従順な人ととらえてしまうのは問題がある。双方が譲り合って最適な結果を探しだすことが必要だ。
しかしいくら会議をしても決められないということがしばしばある。
その場合 政治的なことであれば、多数決、あるいはツルの一声にせざるをえない場合がある。なぜなら大勢の損得に関わることは、どのように決めても全ての人間が満足するような結論を導くことは難しく、全ての人間が満足する結論を得ようとすると永遠に会議を続けなければならない。会社の判断はビジネスチャンスを逃さないためにすみやかに行わなければならないためだ。
賛否両論に分かれる場合にはどちらが正解でどちらが誤りというわけではなく、その方向性により誰が損をするかというだけのことが多い。であるからより多くの人が満足するであろう多数決、あるいは、最終的にその選択をした結果に対してビジネス責任を取る人間が決める。つまり経営者が判断するということが行われる。
多数決、あるいはツルの一声で決める方法は、技術的な事柄を決めるには適さない。
設計/開発の仕事で進め方を決める際に効率的な方法、信頼性を確認するための評価方法などをは高度で非常の多くの知識が必要だ。正しい判断をするには、その業務内容に深い知識を持つ「有識者」でないと判断できない。なぜならマシン(機器)は物理法則に従い動作しており、誰かの損得で判断をしてしまうと後でつじつまが合わなくなるから。会社の中で有識者はわずかしかいないので多数決で決めてしまうと間違った方向にプロジェクトが行ってしまう。
経営者は経営の専門家ではあるが、技術的な専門家ではない。ツルの一声で技術的なことを判断してしまうとプロジェクトが失敗する可能性が高くなる。経営者は経済的な責任を取ることができるかもしれないが、会社の赤字が積み重なれば、経営はやがて立ち行かなくなる。
技術的な最終判断をするのはプロジェクト・リーダーであり、有識者をプロジェクト・リーダーに任命し、判断させる。
政治的なことと技術的なことでは意思決定の仕方がことなるので注意する。
[メモ]
妥協とは:対立した事柄について、双方が譲り合って一致点を見いだし、解決すること(自分の意見も言い、最適な結果を探す)。
従順とは:人に逆らわない、おとなしく人の言うことに従うこと(自分の意見を言わない)。
コミュニケーションの質と量
コミュニケーションの量は多すぎても、少なすぎても問題がある。コミュニケーションの量が多すぎても、コミュニケーションには工数が必要であるのでトータルで考えると仕事の効率が下がってしまう。
各担当者に仕事の割り振りが適切でない、あるいは役割分担があいまいであると無用なコミュニケーションが増加し、作業効率が低下する。組織を考える、役割分担を明確にすることは重要である。
コミュニケーションの質も問題である。
おしゃべりが好きな人は、業務時間中に遊びの話に夢中になってしまうかもしれない。また社外で機密情報や個人情報の話をしてしまうかもしれない。
これはある意味コミュニケーションではあるがつつしまなければならないコミュニケーションである。
どのようなコミュニケーションが必須であるかも考えておく必要がある。
たとえば業務に必要なことがらでも個人で判断すべき内容と、上司(あるいはプロジェクト・リーダー)に承認をとるべき内容がある。いちいち細かいことまで承認を取っていると業務の効率を低下させ、上司も対応しきれなくなる。何が承認を受けなければならない内容であるかはその会社/部署によりことなるので基準を設けておく必要がある。
論理的に話す訓練
遊びでのコミュニケーションであれば、本当は同意していなくてもYESといっておく。そして、相手をほめる言葉だけを使い、否定的なことは言わない。
これは好きな人には従い、嫌いな人には反発するという性質があるため、自分の意見に同意してほしいと思うならば好意を持ってもらう必要があるからだ(単純にその方が楽しいということもある)。
これはコミュニケーション能力というよりも相手に好意をもってもらう能力と言った方が良いかもしれない。
遊び/趣味ではみんなが楽しむことが目的であり結果は求めない(あえて目的を定めるのであれば楽しめたかどうか)。なので心の中で思っていることと、言葉として発していることが一致していなくても許される。
しかし仕事では結果が求められ、義務や責任がある。だからこのような手段がビジネスシーンで通用するとは限らない。ビジネスシーンでは、本音で話す、感情に流されず、冷静に、論理的に話すことが必要だ。
人により、感情優先で判断する人、論理的な思考をする人があるので相手に合わせて説得方法を選択するということも必要であろう。感情優先の人に論理的な説明をしても説得は難しいからだ。
本音で話すということ
会社では「ホウレンソウが大事」などと言われることがある。
ホウレンソウとは報告・連絡・相談のこと。ただ日本の会社ではさしさわりのない内容だけ報告してホウレンソウをしていることにするということが多い。
これは終身雇用の弊害の1つであるが、たとえば仕事をしていて何か重大なミスをしてしまったとする。上の人間に相談して親身になって対応してもらえるかというと、何も対応してもらえずに「しかられるだけ」ということが多い。
なぜなら簡単に転職ができないので経営者/管理職は働きやすい環境を作ることに無頓着になり、役職を持った人間は自身では動こうとしない(役職に対する甘え)。現場の人間からみれば報告・相談をしてもしかられるだけなのでミス/トラブルを隠し、自己処理をしようとする。つまり「臭いものには蓋」という発想だ。
上司と部下の間に信頼関係がなければコミュニケーションは「建前ホウレンソウ」になってしまう。まず信頼関係を築くことが重要だ。
信頼関係を築くにはまず役職を持った人間から意識を変える必要がある。
ミス/トラブルが発生したときには、怒るのではなく、教育をするということ。部下に対して話しを親身になって聞き、上司も当事者であるという認識の元に協力して問題の解決にあたる。
失敗したからといってけっして人間的に責めてはいけない。あくまでも同じミスを繰り返さないための教育である。大きな損失を出したときには怒りたくなってしまうかもしれない。しかし人の上に立つ人間は常に部下に対して愛をもって接するということだ。
上司が親身になって対応してくれることが分かれば、部下の方も重大な問題が発生した時に隠さず、相談しやすくなる。こんなに良くしてくれる会社(上司・経営者)であれば一生ここで働きたい、あるいはこの会社につくしていきたい。そう思えれば会社の業績もUPし、帰属性も良くなるのではないだろうか?
長期的な視点に立って考えれば信頼関係を築くこと、働きやすい環境を作ることは重要である。
感情に対する配慮
論理的に話そうとしても人は感情に流されてしまうということがある。なので相手の感情に配慮することも必要だ。
たとえばNOと言わなければならない時には、それを相手に正しく伝えなければならない。ただしその時の表情、声のトーン、身振りなどで印象はずいぶん違う。相手に嫌悪感を抱かせないでNOといえる能力が必要だ。
表情は自然な方が良い。そしてNOと言われても怒らないこと。ここまではどんな場合でも適用できる手法である。
笑顔が良いというのはTPOによる。みんなが真剣な話をしているのに1人だけ笑顔だったならば「おちゃらけたやつだ」と思われてしまう。また社会的地位の高い人と話す時に笑顔を作っていると「自分を軽く見られている」と思い気分を害するかもしれない。役職を持っている方はプライドが高い場合があるので相手によって使い分ける必要がある。
人間は、誰もが自分は大切にされたい、自分は優れていると思う心があり、これを「自尊心」と言う。
部下に仕事の指示をしたり、同僚に手伝ってもらうとする。その時 作業途中で横から、やり方にけちをつけたり、仕事の結果を見て不平や不満を言うと、自尊心を傷つけ、その人を否定したことになる。
ではどうすれば良いかと言うと、仕事の依頼をする際には、何をどうしたいかを予め伝えておく。それには業務の内容をよく理解し、効率的に仕事をするためのアドバイス、失敗しやすい点、完成度がどこまでならOKか? 会社のルールでこうしなければならないなどを理解しておくことが必要だ。
上司の主観(会社のルールではない、個人的な考え)の押し付けはできるだけ避けるのが望ましいが、どうしてもそうしたのであれば他の人間と自分との考え方/仕事の仕方の違いを十分に把握し、部下に予め説明できるようにすること。
部下はこれで完成だと感じていても、上司は不満に思うことがある。それは人によるどこにこだわるかが違うためだ。特に上司が神経質な時に主観の相違が起こりやすい。合格とみなす条件を作業を始める前に話しておくこと、あまり神経質にならないことが肝要だ。
敬語を正しく使うこともコミュニケーション能力のうちの1つだ。相手を軽んじる話し方をすると嫌悪感をいだかせ、同意してもらえるはずの内容もNOといわれてしまうことがあるからだ。
その他 基本的なこと
最も基本的なことがらであるが、分かりやすく、明快に話すことも忘れてはならない。アナウンサーのようにはっきりとした発音とまでとは言わないが、ゆっくりとはっきりと話すように心がけるだけでもずいぶん違うものだ。
相手の聞き取り能力が低いから悪いのだと開き直ってはいけない。
特に大勢の前で発表しなければならない時には、自分の声をボイスレコーダで録音して、客観的に聞いてみると良い。とにかく相手が聞き取れないのではコミュニケーション能力は0点だ。
その他 相手に伝えるためには、考え方が整理されているか? 流れに沿って話しをしているか? できるだけ専門用語は使わないなども重要だ。
まとめ
いろいろ書いたが自分中心で考えない、聞き手のことを考えて話すということだろうか? それから情報が共有できていないというトラブルが多いように思う。