2015年7月12日日曜日

地方創生のためにすべきこと

地方創生のため何をするかという問いに対して、農業、観光との話がある。はたして農業、観光だけで地方の再生はできるだろうか?

東京と地方の格差拡大

東京への経済、人の集中は問題がある言われてきた。 道路の渋滞、自動車事故の増加。駐車場・駐輪場がない。狭い家、家賃の高騰。地方の過疎化。

リーマンショック後の不況で、さらに、地方自治体の財政難、東京では人手不足だが、地方では仕事がない。大手企業(大都市に集中)は回復したが、中小企業には光明がない。

なぜ東京と地方の格差が拡大するのか?

地方に生まれても就職する年齢になると東京の企業に就職してしまう。 地方自治体からすると、いままで「子育て支援」で一生懸命世話をしてきたのに稼ぎ時になったら東京にとられてしまう状況だ。

いなかでは仕事がない、若者向けの商店がなく、魅力に欠ける。 生活必需品は入手可能だが、老人向けの安価なものばかり。 商店にしてみれば老人が多いのでそれに合わせた品揃えになっているのだが、それが若者が定着しない理由にもなっている。 若者が東京を希望しているので、企業もいなかで人材を集めるのが困難、東京にしか事業所をつくらない。 こんなのが「負のスパイラル」になって地方の空洞化が進んでいる。

先端技術に関する特区を設ける。

地方に新しい「特区」を設け、新卒や引越しをいとわない人を採用するのはどうだろうか?  もちろん若者向けの商店、交通を含めて整備する。

特に先端技術に関する仕事を増やす。 自動車産業と医療機器は国が重点産業分野として取り上げている。 自動車関連の先端技術、先端医療機器、遺伝子工学、分子生物学など。

ただし工場労働者などのうち単純な仕事は、アジア新興国と競争しなければならないので不利である。 工場の仕事にするのであれば大幅なロボット化(無人化)を推し進め、自宅からロボットの管理ができるようにする。 設計・開発など10年先で会社が存続するためにやるべきことにしぼる。

難病や発生頻度の低いガンなどの医療も国が重点分野として取り上げている。 自己免疫疾患などは現代の医学でも治療が困難。ストレスによるうつ病や心身症なども定量的にとらえることが困難な病気だ。これらの病気は健康診断では発見するのが難しく、会社のパワハラが原因で病気になったことを証明することが困難、裁判を起こすことができず泣き寝入りになってしまうケースが多い。

これらが解明されれば会社側の責任が明確になったり、難治療性の病気がなおるかもしれない。

今まで日本では目先の利益の仕事ばかりをしてきた。これらは新規事業になるので、新しい事業所を作るきっかけにもなるであろう。

先端学園都市計画

それから学園エリアと先端企業がすぐ近くにあるのが良い。 医療関係/先端エンジニア系の学生が近隣の企業に就職しやすいようにすれば人材が定着する(せっかく育てた人材を東京にとられることがない)。 学生時代にその町の良さを実感し、そのままその町で就職したいと思わせること(若者が行く商店や道路の整備がされていること)。

日本では、アルバイトは本業に差しさわりがあるので良くないイメージがある。しかしアルバイトは実際に就職予定の会社の雰囲気、あるいは業界のことが実感できる。会社案内をみたり、面接の時に話をするだけでは本音を話さないので分らないからだ。

生徒も面接官も自分の恥になることは話さないが、一緒に仕事をするようになると、いやでもそのことに向き合わなければならなくなる。 人材適材適所のため、そして人の定着にプラスとなる。

日本人は終身雇用で転職の経験が少ない。 教師は企業での実務経験がなく、学生からいきなり教師になるので企業の現場を知らず、実務で何が必要か分らないのでトンチンカンなことを教えてしまう。

教師もその企業にアルバイトに行ってよいことにする。 企業のプロジェクトリーダが特別講師として実務に則したことを教えるのも良い。 そのようにすることで学校から企業までの人材移行をシームレスにすることができる。 日本人はコミュニケーション能力ゼロであるので実際に見てくるのが一番効果的だ。

教育の多様化

日本では生徒は平等に扱わなければならないという理由で、飛び級、留年はほとんどおこなわれていない。 何回も留年すると能力の低い人間のように見られてはずかしいとか、卒業するまでの授業料がかさむところがいやということなのであろう。

平等とは、人間としての価値に差異はない、みんなが等しくチャンスを与えられるという意味だ。人間には個性があり、能力には大きな差異がある。留年したらダメ人間だという発想こそがおかしいのではないか?

ほんとうに勉強したいと思うのであれば大学を2年で卒業する人と8年で卒業する人がいて良い。日本では全員が同じにならなければならないという思いが強すぎて、ある人はもっと先に行きたいと思って才能をもてあまし、ある人は授業の内容を理解できないまま仕方なく進級を許可される。能力にそのぐらい大きな差異があるのであるから、納得するまで勉強し、それぞれのスピードで卒業すべきではないだろうか? 

ほんとうに使い物になる人材を送り出すことが重要。

ある科目で悪い点数をとってもどこか他の科目で優秀な成績を収める ことができるはずだ。日本では多様性が否定されてしまい、全ての生徒が同じカリキュラムを受けなければならなくなっている。選択授業をもっと増やし、各自が得意な分野で才能を発揮できるようにすべきだ。もっと多様性、個性尊重の教育。

赤点をとったら居残り・補習。なぜできないんだと言われる。 これは全ての人が同じならなければならないという思想、個性は認めない。これは自尊心を傷つけられるだけ。苦手な部分を責めるのではなく、得意な所をほめ、才能を伸ばす教育が望ましい。

家が貧しくて大学に行けない人に、優秀でやる気があれば、奨学金を出す制度を増やすべき。 日本では勉強をしたいのではなく、まだ就職したくない、遊びたい。 単に卒業証書(レッテル)がほしいから大学にいくという人が多すぎる。

企業がレッテル(どこの学校を卒業とか、年齢、性別)で判断し、成果を見ないがゆえにそのようなことになっている。

企業の分散化

各都道府県ごとに何か得意な業界を設定してその関連企業を集めた特区を作るのが理想だと思う。 日本はケイレツで仕事をしているのでケイレツ毎に1つの場所に集めてしまえば輸送費が少なくなる(製造業では部品の輸送にコストがかかる)。 ただ既存の事業所を移動させるのは、従業員が引越しをいやがるのと、設備投資がかかるのですぐには実行するのは難しいであろう。

働き方の多様化(在宅勤務、ワークシェアリング)、成果主義の普及

働き方の多様化、成果主義の普及が急務である。 たとえば定時で終了できる仕事、短時間労働、ワークシェアリング。 そうすれば65才以上の高齢者、身体障害者、小さな子供のいる親などが働くことができる。

社会福祉にお金がかかってしまうのは本来、働けるはずの人間が経営者の好き嫌いで仕事が与えられないからだ。

給料の金額を成果で差をつけると多い・少ないとひがむ人が多い。 なので勤続年数・年齢で時給を決めている。 成果の多い人と少ない人で4倍以上の差があるのに、時給が同じでは経営者が損をしてしまう。 損をしそうな人をレッテルで判断し、避けている。

成果主義にすれば、成果の少ない人は給料が少なくなるので損しなくなるはず。ハンディーのある人でも働けるようになれば社会福祉の出費が節約できる。 必ずしもすべての人がお金が幸福と思っているわけではなく、自分の時間を持てることが幸福だと思っている人もいるのだから。

ITの技術を利用して在宅勤務の普及も必要。 会社に出勤させて監視していなければさぼるのではないか? という不安がある、あるいは本音を言葉にできないので常に回りの人の顔色を伺いながらでないと仕事ができない、という理由でわざわざ出勤させているのは非効率。成果主義にすれば、在宅勤務もしやすくなるであろうし、36協定とか、残業時間とかを気にしなくても良くなる。 通勤にかかる時間(と交通費)は、利益を生み出さない「無駄」である。 このような無駄をすれば、会社・従業員いずれかがその負担を必ずしなければならない。さぼるのではないか?という不安(あるいは一番ダメな子に合わせてルールを決める護送船団方式)で多くのコストを無駄にするのはいかがなものだろうか?

年功序列の社会は、若者の夢や希望をないがしろにしている。 いくら成果をだしても若いからという理由で給料をもらえない。 プロの仕事は成果が重要。年齢や性別、勤続年数、残業時間はどうでも良い。自分より若い人間が多くの給料をもらうのは悔しいと思うだろうがそれは必要なこと。「誰でも成果さえだせればその金額をもらうことができる」のだからひがまないで努力すること。 努力と言うのは、やる気がないのに深夜まで会社に残っていることではない。

農業と観光

農地改革はたしかに必要であろう。 ただし、それだけでは、人件費の差異や連続した広い耕作面積などは 完全に同じにすることはできない。外国の農業を比較、研究するのは良いことだがそれだけではなく、日本の文化、土地に合わせた改革が必要。同じやり方をしないで新規事業に対して積極的にチャレンジする。

日本では稲作にかたよりすぎている。米は減反しなければならない方向であるので、今まで栽培されていなかった作物にチャレンジすると良い。日本料理では使われない食材では消費者はどう使って良いかわからないのでレシピを提案する必要がある。 ファミレスで定期購入してもらい、その食材のフェアをやってもらうようにすると知名度があがる。 すでに多く使われている食材はすぐにお金にはなるかもしれないが、その分競争が激しく利益率が低い。 新しいことにチャレンジする精神がほしい。

農業の高齢化に伴い、休耕田が増えている。これを若い人に貸し出し、試験的な農業に活用するようには出来ないだろうか?  農業には未来がないと思われているので若者がやりたがらない。 そのような意味でも新しいことをし、未来があることを知ってもらい、改革を行う必要がある。

なにも食料品や園芸植物だけが農業ではない。植物からバイオ・メタノール、代替石油、水素を作る。遺伝子組み換え作物による飼料とか、 最近の遺伝子工学、分子生物学の成果をあますところなく産業に応用。 植物から医薬品を作るなども開拓の余地がある。ロボット化も必要であろう。面白そうな開発テーマは沢山あるではないか。 最先端の技術を用いた、ベンチャー企業が多く立ち上がることを熱望する。

高齢者の仕事で農業が適しているというのは、今まで行政が農業を厚く保護していたからで、これからは自由競争をしなければならなくなるのでそうは行かない。高齢者の仕事を確保するには、業種に関係なく、ワークシェアリング、労働の多様性、生き方の多様性を選択できるようにすること。

観光については、東京オリンピックで潤う地域もあるだろう。 しかしどのぐらいの経済効果があるかはその地域ごとに大きな格差が発生する。オリンピックの効果は期間限定なのであくまでもきっかけと考えるべき。永続可能な事業、10年先の地方のありかたを考えていかなければならない。

誰がお金を負担するか

誰がお金を負担するか、いくらかかるかを先に議論しようとすると、多くの人が反発し、話がまとまらなくから、初めはどんなことをし、どのような効果があるかを議論することから始めるのが良い。

ただ実際に改革を実行するには具体的な項目、誰がお金を負担するか、いくらかかるかが必要になる。後者をはっきり決めなければ、改革は実行されないことを肝に銘じておくこと。