2015年4月13日月曜日

労働法改正と成果主義

最近、行政は「成果主義」を日本の競争力強化のために推進しようとしている。 労働者が幸福になるための「労働法改正」がどうあるべきか考えて見た。

弾力的労働時間制度とは

新しい労働時間・給料計算方法は以下の6種類が想定されている。

  1. 通常の労働時間制
    原則8H/日、8Hを超える場合は36協定を作成する。従来どおり労働時間。
  2. 変形労働時間制
    忙しい時期、暇な時期がある場合に使用者が労働時間を計画する。
  3. フレックスタイム制
    始業・終業時刻を労働者が自己管理する。(基本的に社内での仕事、残業代あり)
  4. 業場外みなし制
    外回り営業など、労働時間の算定が困難な場合。 始業・終業時刻を労働者が自己管理する。
  5. 専門業務型裁量労働制
    設計、開発、ライター、記者。※残業代なし?
  6. 企画業務型裁量労働制
    事業の運営に関する仕事。

残業代0法案として反発されているのは5)専門業務型裁量労働制である。 もし施行するのであれば始業・終業時刻を労働者が自己管理し、残業を強制しないこと、やり方を強制しないことが明記される必要がある。それがなければ単なる残業代の未払いと同じ。

上記6種類の働き方に分けるのであれば、職種の分類方法が明確になっていること、実態と一致していることが必要だ。しかし実際問題として労働契約に書かれている内容と実務が異なっている(経営者の都合の良い内容の書類を作成する)ので機能しないであろう。

6種類の働きに分類するのではなく、次のルールが望ましい。

残業を強制しない

同じ労働時間であっても仕事の仕方により、受けるストレスが大きく異なる。 1日8Hであってもまじめに仕事をしている人や、やり方を厳しく規定されてしまっている職場ではストレスが大きい。これは職種では決まらない。そこの管理職の性格による。 夜遅くまで会社に残っていても会社で遊んでいるだけの人間ならストレスはない。

以下のことが厳守される場合に限り、残業代はなし(成果主義)にできることとする。そこを明確にする必要がある。

  1. 仕事を始める前に仕事の成果(目標)を明確にし、管理職が現場の人間に伝える。
  2. 成果の計算方法が明確(書類あるいはメール記録)で、成果にあわせて給料が支払われる。
  3. 仕事のやり方を現場の人間に任せる、労働時間は各個人が決める。
  4. 成果の計算方法は経営者と労働組合で交渉する。
  5. ほんとうに1日で終わる仕事の量であるかは管理職と現場で交渉する。

明らかに労働法に違反する時間を指定してしまうと違法になるから、明らかに1日で終わらない量の仕事をあたえて、これが終わりまで帰っちゃダメといっておく (たくさん残業させた方が儲かる)。そんなことが行われてしまっているのが現状だ。 それは実質、残業の強制と同じ、パワハラである。

見回りの強化、労働者同士での情報の共有

労働組合の幹部は、経営者と癒着が起こりやすい。 支払った組合費は「労働組合の幹部の飲み代」になってしまい、相談しても動いてくれないことがある。 なので労働組合の幹部は、若い人間にやらせる(もちろん係長以下の役職)。

「5.専門業務型裁量労働制」は残業の強制やパワハラが起こりやすいので労働組合、あるいは有志による労働法違反の監視が必要。

有志による見回りで残業をしている人間に事情聴取をする。 効率的に仕事をして定時に帰るのが原則であるという文化を創る。パワハラが起こっていないか確認し、パワハラならば相談にのる。 現場の人間同士がIT技術などを用いて情報を共有し、絶対に泣き寝入りはしない、不正行為は正すという信念をもって行動する。

定時で帰るのは悪いことではない。重要なのは「成果」である。 成果とは今月の売り上げだけではなく、教育や会社のブラント・イメージを向上させること、基礎開発(10年先でも企業が存続するために必要な仕事)である。

労働基準監督局の権限強化

残業代を払わなくても良いとするとパワハラが起こりやすいので、 まず先に労働者の幸福、健康を守るしくみを用意しておくこと。

新しい労働法を施行する前に、労働基準監督局の権限強化が必要だ。 労働基準監督局の工数が不足しているので人数を増やすことも必要である。 できるだけ1件1件に時間をかけないで対応するようにする。

労働法犯罪者の告発がしやすい環境をつくることが必要だ。 実際に違反行為が分った時には、労働組合を通して経営者に対して改善を要求。 改善が行われなければ、労働基準監督局に報告、または簡易裁判に訴える。 絶対に泣き寝入りはしない。

本音で話せるようになる

成果主義/年功序列というのは文化である。 表面的なことをアメリカからコピペするだけでは日本に定着しない。

日本で成果主義が失敗するのは「やる気をださせるため」といい、実は「給料の支払い金額を低減」するためであったり、経営者や管理職だけ給料は変わらずに、現場の人間だけ安くなってしまう。 経営者や管理職は評価を受けない。失敗してもそのことを隠し、同じイスに座り続ける。 そんな成果主義ではみんなが反対するのは当然だろう。

どのようなことを成果にし、どの成果に対して何ポイントにするかということがきちんと本人に開示されていること。 あなたは何ポイントだから給料はいくらだということを上司から部下に伝え、納得いかなければ交渉をする。「ゴリ押し」になってはいけない。

ポイントのつけ方を、経営者や管理職だけで決めるのではなく、労働組合の代表、現場の人間とも議論すること。 半年、あるいは1年ごとにポイントのつけ方を再検討、時代に合わせたものに変更してゆく。

労働者1人1人の考え方を改革していく。議論するということが重要である。 決して利権をもった人間からの「ゴリ押し」になってはいけない。

金額に不満がある人間や職場が働きにくい場所であれば転職してしまうかもしれないが、それは必要なことだ。複数の会社を経験、比較しなければ成果と報酬が公正なものかわからないからだ。 それにほんとうに必要な人間が転職してしまうという経験がなければ、経営者は会社を改革しようとは思わないであろう。

有期雇用に関する改正

短期派遣は、問題ではない。 雇用の不安定さを問題にするのは正社員になりたいが、しかたなく派遣をやっている人が多いからであろう。 派遣/正社員とは本来は生き方の選択であるはずなのだが、日本では経営者の都合で決まり、労働者自身の意思で決められないということが問題である。

派遣というのはリスクがあり、即戦力であるのだから本来は正社員より給料が高くなるはずである。 しかし、日本では定年まで勤める労働者が価値があるとし、成果に背を向けている。 派遣だから、若いからという理由で成果をいくらだしても低賃金で働かなければならない。 たくさん残業した人間がえらいとされ、成果を見ない。 女性は残業を嫌がり、30才で退職してしまうので価値のない労働者→低賃金、責任のある仕事は任せられないという発想になっている。

成果を計測するという文化がないため、個人的な好き・嫌いで重要な仕事をしている人に不利益をあたえたり、成果を出せている人間に給料を払わない。 むしろ積極的に転職すれば、人が定着するには、働きやすい労働環境、成果に見合った給料が必要だということをわからせることができる。

派遣の差別待遇が問題

派遣だからといって狭く、汚い部屋におしこめるとか、派遣だからボロボロの椅子、壊れかけのPCを与える。どうせ派遣だから文句は言えないだろうという対応ではこれから働こうという労働者の「やる気を奪う」。

アメリカでは新しい事業を始める時、即戦力のある人間をすばやく雇用するために派遣を使用する。なので重要な仕事に派遣が用いられ、給料も良い。 新しい事業であるので失敗することがあるのは経営者も労働者も理解している。

日本では、できるだけ長期で働いてほしいが、不況になった時に会社の都合で切ることができる人材がほしい。正社員だけ助かりたい。正社員の給料削減はできない。 つまり「トカゲのしっぽ」として派遣が使われてしまっている。 この後ろ向きな派遣の使い方が問題なのだ。